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本書は非整数階微積分の基礎から応用を扱います.
非整数階微積分の歴史は (自然数階の) 微積分が発見されてからほぼ同時期に始まりますが,
今日に至るまでそれほど広くは浸透している分野ではありません.
歴史の長さが物語るように,非整数階微積分は度々再発見されますが,
決してメジャーな分野ではないため一般に知られることは滅多にありません.
実際,和書が圧倒的に不足しており,
その意味でも本書は希少な部類に入るといえます.
非整数階微積分とは簡単にいえば,非自然数回だけ,
例えば 1/2 回 (!?) だけ微分したり積分したりする操作のことです.
しばしば適当な例を述べたいために,
Lp 空間のように冪を二次以外へと拡張することがあります.
こうして展開される議論は物理学との関連を欠くかのように語られますが,
果たしてそうでしょうか.
非整数階微積分がこの種の橋渡し役となることを理解することで,
新たな自然観を見出すことができます.